□レビュー:
事故で闘病生活を送る藤崎燈子と中学時代の友人宗澤浩樹との純愛物語。
事故に遭い目を覚ました時には3年が経ち両親も亡くなっていた。それだけでも酷なのに一日三時間しか起きていられないという制限付き。三年という月日によって現実から孤立し、3時間しか起きられないことにより現在から孤立したことで変わることのできない燈子。一方、浩樹は3年間で進学し、高校生活を送っていた。その間、周りに流され、親の言いなりで変わらなかった浩紀。
ある日、起きた燈子と浩樹が出会い、止まっていた時間が動き出す。
高校生二人が織りなす純愛物語です。“時間”の違いですれ違う思い、それでも互いを大事にしている気持ちは一緒で、それぞれの言葉や思いが精緻に描かれています。
時間に追われている日々かと思いますが、一度この作品を読み“時間”について考えてみませんか。
☆作品情報
□作品名:ひかりをこえて
□作者:宵待なつこ さん
□掲載所:カクヨム
□文字数:約15万字(2021年3月7日時点)
□連載状況:完結済
□タグ:純愛、セカイ系、新海誠成分多量、純文学、シリアス&ウエット、ダブルキャスト
□あらすじ(原作より引用)
中学二年生の藤咲燈子は、あるとき目が覚めると、自分が見知らぬ病室のベッドで寝かされていることに気付く。
医者の話によると、自分は父親の運転する車で事故に遭い、三年間眠ったままだったという。
両親はそのときの事故で亡くなり、親戚はいつの間にか蒸発していて、孤独と絶望に押し潰されそうになる燈子だったが、想いを寄せていた宗澤浩樹と奇跡的な再会を果たす。
喜び合う二人。しかし燈子が意識を保っていられるのは、一日のうち三時間ほどしかなく、彼女は徐々に互いに流れる時間の密度の違いに気付いてゆく──。
──タイム・ディファレンス
宗澤浩樹は燻っていた。夢を叶えるために進路を決めている友人や、両親との確執、何がしたいのか決めることさえ出来ない自身の優柔不断さに。
「こんなことをしている場合じゃない……」
いつしか口癖になっていた言葉を繰り返しながら、浩樹は今日も藤咲燈子の病室へ赴く。彼女は浩樹が唯一心を許した人間だったが、事故に遭ったために三年間眠り続けていた。
しかしあるとき浩樹が病室の扉を開くと、そこには起き上がっている燈子の姿があった。
信じられない奇跡に喜ぶ浩樹。しかし彼女の時間は浩樹よりも圧倒的に短く、三年前から停滞したままだった。
自分を取り巻く環境が有無を言わさず変化してゆく中で、動かない燈子との時間に、浩樹はいつしか安堵と同時に苛立ちを募らせてゆく──。
──タイム・ディスタンス
この作品が好きだった方は⇩「君の名は。」もお勧めです。言わずと知れた大ヒット作ですが、未読の方は是非読んでみてください。
コメント